2004年映画レビュー

タイトル / バイオハザード2 アポカリプス 

公開年 製作国 / 2003年 アメリカ=カナダ=イギリス合作映画

監督 / アレクサンダー・ウィット

出演 / ミラ・ジョヴォヴィッチ、シエンナ・ギロリー ほか

観賞場所 / 渋谷シネパレス2(渋谷)

ストーリー

地下都市ハイブから溢れだしたアンデッドが、地上のラクーンシティにあらわれ、あっという間にアンデッドの街に変貌。病院から逃げ出すことが出来たアリスだが、ラクーンシティで生存者と共にサバイバルへ突入。収拾がつかなくなり、戦術核で街の破壊を計画するアンブレラ。街からの脱出方法を探すアリスたち。そして、混乱に乗じて発動する”ネメシス計画”。果たして、アリスたちは無事脱出が出来るのか!?シリーズ第二作。

レビュー

いろんな映画に当てはまるのですが、この映画においても第2作の出来が良くない、と思います。アクションは派手になり、ゲームに合わせて新しいモンスターも登場したけども、どうもピンときません。緊迫感は薄れ、アンデッド独特の恐怖感も感じませんでした。もちろん、ドキッとするシーンがないわけじゃありませんが、心理的に圧迫されるものではなく「突然出てきたから驚いた」、ただそれだけでした。前作の印象があまりに強く良かっただけに、「アポカリプス」に対して厳しくなるのかも知れませんが、正直言って面白くありませんでした。ああ、残念・・・。

タイトル / スウィングガールズ 

公開年 製作国 / 2004年 日本映画

監督 / 矢口史靖

出演 / 上野樹里、貫地谷しほり、本仮屋ユイカ、豊島由佳梨、平岡裕太 ほか

観賞場所 / シャンテシネ1(有楽町)

ストーリー

夏休みのまっただ中、補習組の計16人は、自分たちのせいで弁当に当たった吹奏楽部のかわりに演奏することに。最初は単なる補習のサボリ目的だったが、段々ビックバンドジャズにのめり込んでいく。ところが演奏本番間近になったある日吹奏楽部が復帰し、自分たちは用なしとなってしまう。「もう一度音楽を!」と楽器を手に入れるために働きだした面々だが、途中であえなく空中分解。しかし、演奏を続けたい鈴木友子(上野樹里)たちは困難を乗り越えようやく楽器を手にするが・・・。

GOOD

文句なしに演奏!!オーディションを含め、特に音楽経験を買われて選ばれたメンバーではないとのこと。映画の為とはいえ、彼女たち(彼も)があそこまで上達するにはかなりの努力があったはず。そのかいあって、呼吸のあった楽しい演奏に魅入られました。「やれば出来るんだ!」ということを教えられた思いです。監督が言っていますが、これをきっかけに演奏は始める人がいても全然不思議じゃありません。演奏後の彼女たちの表情は本当に輝いていました。そして、演奏中の「スウィングガールズ アンド ア ボーイ」はカッコイイ!

GOOD

スウィングガールズの面々に若干演技にぎこちなさがありました。かえって演奏の方が堂々していたりして(笑)。

鈴木たち4人がスーパー前で演奏しているとき、脱落したメンバーが戻ってくる場面。ちょっと調子が良すぎないかな〜、と。あそこでは演奏に加わらないで、あとで謝りに来て再結成・・・という方が自然だと思いました。

前半ののんびりムードで、映画がどうなるかと心配してしまった。もう少し後半に時間を振り分けても良かったかも。

レビュー

音楽の楽しさが十分実感できる映画。「ウォーターボーイズ」の矢口監督らしい娯楽作品でした。特に主人公5人のキャラクターが光った映画です。個性的なそれぞれをよく表現していました。笑いのシーンでは全編にちりばめていますが、特にキノコ狩りのシーンは笑えます。映画の流れを変えるアクセントとして光ります。
最近はおしゃれなカフェにジャズが流れることが多く、以前より身近になってきていますが、それでもCDを買いあさってのめり込む、というほど一般的ではないと思います。この映画で、より一層ジャズに興味を持つ人が増えそうです。まずは「スウィングガールズ」のCDから始めてみてはいかが?

タイトル / 誰も知らない 

公開年 製作国 / 2003年 日本映画

監督 / 是枝裕和

出演 / 柳楽優弥、北浦愛、木村飛影、清水萌々子、YOU ほか

観賞場所 / 上野東急2(上野)

ストーリー

母親と兄妹4人で楽しく暮らしている家族が、新しいアパートに引っ越してきた。子どもたちの父親はそれぞれ別々で、学校にも行かず、大家でさえ子どもたちの存在を知らない。ある日メモと現金を残し、母親が家を出た。一度は帰ってきたが、またすぐに家を空け、今度は約束の日にも戻ってこなかった。残されたわずかなお金を頼りに、兄妹4人の生活が始まった。デタラメな住所からお金が送られてくるが、それも滞りがち。不安定な暮らし、そして母親に会えなくギスギスしていく兄妹たちに突然悲劇が襲う。

レビュー

この映画のラストを見ると、「彼らは周りの助けを受けながらも、逞しく生きていくだろう」と感じさせる静かで暖かい気持ちになった。次女のゆき(清水萌々子)が死んでしまうが、こどもたちの絆は強まり、これからも暮らしていけるだろうというはかない希望だった。結果的に子どもたちを捨てた無責任な母親(YOU)だが(当然だが父親はもっと無責任だし、それだけでは言い表せないが・・・)、彼女なりに子どもたちを愛し、子どもたちも母親を愛していた。しかし、”一人で育てなければいけない”という重圧があまりにも強く、その状況から逃れてしまった。もちろん、押しつけられた形の長男の明(柳楽優弥)はさらに悲惨です。設定上は12歳、学校に行ったり友達と遊んだりしたいさかりだが、妹や弟の面倒を自分が見なくてはいけなかった。だが、明は放り出して逃げたりせず、何とかしようとする。それは自分たちしかいないんだ、という強い気持ちだろうと思います。そんな兄に、妹や弟も協力して生活が続いていきます。コンビニ店員に「警察や児童相談所へ行ったほうがいい」と言われるが、家族がバラバラになるのが嫌だ、と明は答えます。子どもたちにとって、家族とは兄妹の4人しかいなくなってしまったので、それを壊したくないのが偽らざる気持ちだったのでしょう。彼らと関わりを持つようになった紗希(韓英恵)やコンビニ店員に助けながら、ボロボロになりながらも笑顔を忘れず生きていく姿に胸が苦しくて、言葉になりません。しかし悲しくて涙が出る、ということはありませんでした。それは子どもたちがどんなに苦しい状況においても、涙を見せなかったからかもしれません。

「誰も知らない」というタイトルは、子どもたちが世間から生まれたことも家族であることも認識されずにいることからきています(と思う)。この映画は、実際に起きた「西巣鴨事件」がモチーフになっていて、是枝監督が最初に脚本を作ってから15年に経てから映画化されました。実際の事件(もっと悲惨)とは内容は異なりますが、とかく周りの人や家族との絆が危うい今の世の中で、人との絆をもう一度見直すメッセージが込められた映画だと感じました。

最後にこの映画に出演した子どもたち。カンヌ映画祭で受賞した柳楽君だけでなく、他の出演者も素晴らしかった。演技を超えた演技をしてくれたと思います。また出演者だけでなく監督・スタッフにも拍手と感謝の気持ちを送りたいと思います。間違いなく、今年最高の映画の一つになるでしょう。公開中出来るだけ多くの人に観て欲しい映画です!

タイトル / ぼくセザール 10歳半 1m39cm 

公開年 製作国 / 2003年 フランス映画

監督 / リシャール・ベリ

出演 / ジュール・シトリュク、ジョゼフィーヌ・ベリ、マボ・クヤテ ほか

観賞場所 / 日比谷スカラ座2(有楽町)

ストーリー

フランスの小学生のセザールは日ごろの大人たちの態度(父親を含め)に不満がいっぱい。ある日、自宅に警官たちが押しかけ、急遽父親が旅行に出かけることになる。「きっと父親が犯罪を犯して、刑務所に入れられるのだ」と思い込むセザールに先生や友達は優しくしてくれるが、突然父親が戻ってきて、ただの旅行だったことが判明。校長先生に怒られるわ、父親に殴られるわで、意気消沈してしまう。そんな折、親友であるモルガンの父親探しに、ひそかに想いを寄せるサラと三人一緒にイギリスに向かうことを決断。それぞれの親に嘘をついて出かける先にはどんな冒険が待ち構えるか。

GOOD

子どもの視点から描かれた、日常の出来事が新鮮。子どもであるが故に感じる不満や興味を抱く事柄が、実によく描かれています。この映画を観た方は、きっと自分にもあんな事があったなー、と懐かしく振り返ることでしょう。そして、自分の行動を顧みて、理不尽な大人(あるいは親)であることを意識するかも知れません(この辺は人によるでしょうが)。

子どもらしい(笑)、素直な笑顔。三人はそれぞれ意見は持ってはいても、やはり時折見せる笑顔はいいですね。心が和みます。

BAD

あら探しみたいで、幾分気が引けますが、サラがチケットを買った場面。子どもには本来チケットは売れないが、サラが大人っぽい化粧や服装をしたから買えた、というのは無理がありすぎ。セザールが「今日のサラはおとなっぽい」と言う台詞がありますが、子どもから見て大人っぽいぐらいでは、大人から見たら、大人には見えないでしょう(ま、映画ということで気にはしませんが・・・)。

レビュー

この映画は、複雑になっている家庭環境を少しでも前向きに考えて変えていこう、と観る人を励ます映画になっていると思う。映画では子どもが中心になっているが、彼らなりの考えや世界があって、親が真剣にそれに向き合わないことによって、親子関係が上手くいかない状況を示しています。いま日本でも、親による虐待やその逆に親を殺してしまうなど、殺伐としたニュースが連日のように流れていますが、監督はそういった状況を少しでも何とかしたいと思って、”自分の中の子どもの声”と子育ての経験を元に作品にしたんだそうな(サラ役のジョゼフィーヌ・ベリは実の娘)。セザールの台詞や行動は笑いを生むが、それだけで終わらせてはいけない。それぞれがもう一度自分の子ども時代を思い出して、考え直すきっかけにして欲しい。大人、とくに子どもを持つ親にオススメしたい映画です。

タイトル / キング・アーサー 

公開年 製作国 / 2004年 アメリカ映画

監督 / アントワン・フークア

出演 / クライヴ・オーウェン、キーラ・ナイトレイ、ヨアン・グリフィズ ほか

観賞場所 / 丸の内ルーブル(有楽町)

ストーリー

ローマ帝国軍の司令官アーサーは、”円卓の騎士”を率いてブリテンのハドリアヌスの城壁を長らく守っていたが、北からサクソンの侵略そしてローマ帝国の衰退に伴い、ブリテンから撤退することになった。しかし、兵役が終了する直前のアーサーたちに「サクソンとウォードに囲まれた村からローマ人貴族一家を救出しろ」という過酷な命令が下る。苦渋の決断の末に乗り込んだアーサーたちに更なる試練が降りかかる。

GOOD

昨今のファンターブームの原点とも言われる「アーサー王伝説」ですが、この「キング・アーサー」は剣と魔法の”剣”のみで構成されています。そもそも、アーサー王伝説については諸説紛々としていて、確たるものはないのですが、そのうちの一つを元にしています。この魔法を廃したことによって、有名な魔法の剣(エクスカリバー)も父の形見の剣になっていますし、魔法使いマーリンも、知略家のウォードの頭領になりました。しかし、そうしたことにより物語に説得力が生まれました。

CGやスターに頼らないこと。確認は取っていませんが、おそらくほとんどCGは使われていないかと思います(怪しいのは氷上でのサクソンとの戦闘)。また、これといったスター俳優を起用していないこと。すべて物語のリアリティを追求した結果だと思います。

レビュー

観ていて2回ほど泣きました。”自由”と”平等”にこだわったアーサーの生き方、そして現実主義者だが仲間や友情を大事にするランスロット。リアルさにより、登場人物に感情移入がしやすくなり、共感したからでしょうか・・・。円卓の騎士を中心に数多くの登場人物がいますが、私は特にランスロットに共感。彼は正確な現実認識をしながらも、友情を捨てきれず、最後に死んでしまった。私が流した涙は彼の無念な思いが感じられたからでしょう。死を悼んでいるからでなく、悔しいからです。いい意味で伝説を扱った作品には見えませんでした。

タイトル / 箪笥<たんす> 

公開年 製作国 / 2003年 韓国映画

監督 / キム・ジウン

出演 / イム・スジョン、ムン・グニョン ほか

観賞場所 / 銀座シネパトス1(銀座)

ストーリー

郊外の家に父親とやってきた美しい姉妹。迎える妻に対しそっけない父親。継母に敵愾心をむき出しにする姉、そしておびえる素振りみせる妹。夜中に忍び寄る不可解なもの。断片的に現れる夢。この家にはいったい何があるのか。

GOOD

美しい映像。この映画は家が中心なので美術スタッフが力を入れたのが良く分かります。 工夫された照明に照らされた室内の装飾・家具や小道具類などが美しく、「こんな家に住んでみたい」と思わせる出来具合(怨霊つきなのは勘弁ですが)。

姉妹の演技。映画内での役は十代半ばのはずですが、姉スミ役のイム・スジョンは1980年生まれ。撮影当時20歳は超えているのにとてもそうは見えず、それが怖かったり。しかし、演技の見ればうなずけます。妹と話すときは笑顔で優しく話し、継母には激しく憎しみの表情でのぞみ、何かの拍子に感情が抜け落ちた表情もする。その切り替わりを巧みな演技力で表現していた。そのイムと実年齢が7歳も違う妹スミン役のムン・グニョンも年齢に似合わないほど役になりきった演技をしていました。

BAD

ホラーでもありミステリーでもある作品なのが、画面の隅々や会話などの注意しておかないと、ところどころに出てくる伏線を見逃してしまいます。最後には謎解きが行われるのですが、それだけではわからない(あるいは納得できない)点もちらほら。一番の問題は継母が最初に登場するのはいつか、ということです。父親が助けを求める電話を入れ、車で到着したときが一番それらしいのですが、それまでの継母はすべて姉の想像の産物(もしくは自分自身)なのかがちょっと疑問。韓国でも公開されてから、この映画に関する疑問について推理しあったりしているようです。わからなくて気持ち悪い人は「そういった疑問にすべて答えている」という吉村達也さんの小説もあります(笑)。

レビュー

「家族」と「絆」を扱った良作。思わず<悪い点>に書いてしまいましたが、この映画における謎が物語を怖く、そして悲しく見せています。妹を救えなかった姉が深く悲しみ、それが自分の心の中で妹を生み出し、度が過ぎるぐらい可愛がっている理由が分かるにつれ、心が締め付けられます。しかし、その悲しみが深すぎるゆえ、精神を病み、そして新たな悲劇を生むことになります。最後に姉スミが流した涙と微笑みは継母へ復讐を果たせたことの喜びなのか・・・だとしたら人間の業の深さを改めて感じてしまいます。

タイトル / ハリー・ポッターとアズカバンの囚人 

公開年 製作国 / 2004年 アメリカ映画

監督 / アルフォンソ・キュアロン

出演 / ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン ほか

観賞場所 / 2003/1/13 上野東急3(上野)

ストーリー

ハリーの両親を殺す手助けをしたというシリウス・ブラックがアズカバンから脱獄した。ダドリー一家とトラブルを起こしたハリーは、ホグワーツへ向かう途中に死の前兆といわれる犬グリムを見かける。さらに汽車の中ではアズカバンからシリウスを探しに来たディメンターに遭遇し意識を失うが、居合わせた新任教師のルーピンに救われる。そして、とうとうハリーを狙うシリウスがホグワーツに侵入した。全七部作(?)第三部。

GOOD

相変わらずレベルの高い映像。今回新たに登場した怪物達、ピポグリフ・狼男・本の怪物(名前忘れました)などいますが、より自然な振る舞い(って本物はいないのであくまで想像ですが)が出来ていたと思います。ホグワーツの舞台自体も、シリウスが「美しい」といった場面では、幻想的でなおかつ親しみやすさを感じされる景色を見せていました。

ハリーたちの成長。監督も言っているとおり、この物語は登場人物、特に主人公達三人の成長の物語でもあります。前二作のいかにも子どもといった感じから、少し大人になり悩み苦しみながら逞しくなっているのが印象的。その中でも今回はハーマイオニーが一番変化しているのでしょう。あの気の強い学校第一であった優等生が、ハリーを引きずり回さんばかりの行動力で、危機的な状況を乗り切っていきます。思春期を迎えた彼らの微妙な心理も面白い。

時間を巻き戻した箇所での場面展開。原作でも感心したところですが、映像化されても上手く表現されていました。第三部での重要な場面でしたが、過去の自分たちに鉢合わせしないように隠れながら追跡するところは、こちらもドキドキさせられました(ハリーとハーマイオニーのさらに後ろからの視点で臨場感UP)。

最後のスタッフロール。話の中に出てきた”忍びの地図”を下地に、なが〜いスタッフロールを最後まで工夫してました。やはり注目は”足跡”の動き。大小の大きさはもとより、走ったり、両足で跳んだり、待ちぼうけ食わされたり、話し込んだりと動きが様々。さらに人間・猫・鳥などの種別、特に靴→裸足→オオカミ(に変化)と話に関連したものあり、非常に手が込んでいました。

BAD

やはり時間が足りない。原作の密度が濃いため、どうしても話が性急に展開してしまうのが残念。

原作との違い(って原作が手元にないので不確かですが)。確かハリーと女の子(ハーマイオニーではない誰か・・・笑)とのロマンスがあったような。まあ、時間のことも含め原作には無い場面もあるので一概に悪いとばかりは言えません。

レビュー

説明することが無いほどの映画です(情報行き渡っていますし・・・笑)。私自身は時間が足りないことが唯一の不満でした。とはいってもマトリックスみたいに上下に分けられても困りますが(笑)。映画はほとんど楽しく笑えるところがなく(マージおばさんやロンの数カ所)、全体的に暗い映像・ストーリーに終始していた分、それだけに最後にハリーが見せた開放感溢れる笑顔が素敵に見えました。映画の中での成長と現実の彼らの成長がリンクしていて、非常に面白いと思います。

タイトル / スイミング・プール 

公開年 製作国 / 2003年 フランス映画

監督 / フランソワ・オゾン

出演 / シャーロット・ランプリング、リュディヴィーヌ・サニエ ほか

観賞場所 / シャンテ・シネ(有楽町)

ストーリー

イギリスの人気女流ミステリー作家であるサラは、出版社社長から勧められ、南仏のプロヴァンスにある社長の別荘を訪れる。落ち着いた滞在になるはずだったが、突然社長の娘であるジュリーが現れる。自由奔放な彼女に生活をみだされ、いらだちを強めるサラだが、一方で若さと美しさに惹かれ、ジュリーの行動を覗き見ることに。そして、お互い徐々に打ち解けあってきたとき、スイミング・プールで謎の殺人事件が起こる。

GOOD

この映画に貫かれる対比の構図。物語のスタートである”曇天のロンドン&テムズ川”と旅行先の”きらめく太陽のプロヴァンス&スイミング・プール”。サラ(成熟&堅物)とジュリー(若さ&奔放)。サラとジュリーの対比を強調する場面展開(プールサイドで寝そべる姿とそれを見つめる男、水中を泳ぐ姿など)。主役のベテラン俳優ランプリングと若手俳優サニエの現実世界の組み合わせ。

最初は無愛想でいらだたしげ、無味乾燥といった面持ちのサラが、ジュリーと出会い刺激されることで、心情的・肉体的に女としての輝きを取り戻す。その変わりようは、蝶がさなぎから成虫に変化する様をつぶさに見ているかのよう。最後の方で見せるサラの笑顔は本当に魅力的!シャーロット・ランプリングの演技と女優としての輝きに圧倒される。

若手俳優の有望株、リュディヴィーヌ・サニエが演じる若くて奔放なフランス娘ジュリーが可愛い。「8人の女たち」とは全く違う役柄だが、お腹にある傷が物語る暗い過去を時折垣間見せつつ、魅力的な肢体と振る舞いを見せる。

目が覚めるような青いスイミング・プール。引きずり込まれそうになる美しさ!

レビュー

一昨年公開の「8人の女たち」をDVDで借りて、同じ組み合わせ(オゾン監督と主役のひとりサニエ)の本作品に興味を持って観に行きました。 基本的にはミステリー映画のハズですが、私は見終わった印象は全く違うものでした。殺人やジュリーの暗い過去に対する謎解きよりも、”美”への問いかけだったように思えます。「全女性におくる謎かけ」と文句にもありますが、オゾン監督は特に若い女性に向かって、”若さ=美”ではない。興味を持つ心、行動、そして(美を)考えることではないか、と言っているのでは。物語当初のサラと最後に見せた(いや魅せた?)姿の違いはその現れだと思います。私は男なので、女性から見れば全く違うのかも知れませんが(しかも年代が違えばそれさえも・・・)。答えは一人一人違うのでしょう。最後に、映画館はほとんどが若い女性で埋まり、男性しかも一人で来ている人は数えるほどでした。

タイトル / ドーン・オブ・ザ・デッド 

公開年 製作国 / 2004年 アメリカ映画

監督 / ザック・スナイダー

出演 / サラ・ポーリー、ヴィング・レイエス、ジェイク・ウェバー ほか

観賞場所 / 日比谷映画(有楽町)

ストーリー

看護婦のアナは愛する夫のルイスと平和に暮らしていた。ある朝、寝室のドアが開くと隣家の少女ヴィヴィアンが立っていた。血まみれの姿に慌てて駆け寄るルイスだがヴィヴィアンに人間離れした動きで襲いかかられた。首をかみ切られ、そのまま息絶えたルイス。だが次の瞬間生き返り、妻のアナに襲いかかってきた。訳も分からず、なんとかその場を逃げ出したアナだが、車を走らせると町はゾンビに溢れかえる異常な状況に陥っていた・・・。

GOOD

ゾンビがのろのろと動くのではなく、実に活動的(笑)。銃などは使用できませんが、死ぬ以前よりも俊敏な動きで走り回ります。多勢に無勢の状況では逃げ回るしかありません。代表的なシーンは車で逃げるアナに夫のルイスが猛然と追走するところ。手近な獲物(つまり生きた人間)を見つけて急ターンするのには笑ってしまいましたが。

ゾンビが人間を食べているシーンが(ほとんど)ないこと。この映画でも、ゾンビにかまれた人間はゾンビになるわけですが、それを食べたら仲間?を増やせないので・・・というのは冗談ですが、ゾンビの動きのスピーディーさに合わせたらしい。あんまりお食事シーンが多くあったら、R-15指定じゃすまなかったでしょう。

主人公アナ役のサラ・ポーリー。最初のシーンでは普通の看護婦だったが、徐々に逞しくて機転が利く戦う女性になった。ショッピングモールに逃げ込んで、一安心したときに急激にこみ上げてくる悲しみを上手く表現していたと思う。アナが初めて人(ゾンビだけど)を殺すときの一瞬見せる躊躇。そして、ゾンビになりそうな人をマイケルが殺そうとするときのやるせない表情。

ゾンビ化した母親ルダから子どもへのいわゆる母子感染。そのゾンビ化した妻と生まれたばかりの赤ちゃんを守ろうとする夫のアンドレ。アンドレは生き残った人間に銃を向けてでも家族を守ろうとしたが、結局3人とも死亡。愛情の複雑さを感じたシーン。

BAD

ゾンビ発生の原因と物語の結末が曖昧なこと。原因はテロや病気であるなどの憶測がニュースで流されているが、結局映画からは分からず。主人公や世界中の人々はどうなったか、ということは明かされないまま。結末についてはエンドロールで少しその場面は出てくるが、中途半端に感じます。何人かはやられたようですが・・・まあ、この辺はあえて曖昧にしているからでしょう。人々の生きることへの活力や新しいゾンビを描きたかったのでしょうから。

アナとマイケルのロマンス。最後の方でマイケルがアナに「好きだ」といい、アナが「分かっている」と答えるシーンがいかにも唐突。危機的な状況を力を合わせて乗り越えるうちに愛情が芽生える、というシーンはよくありますが、もう少しお互いの間にやり取りがあってもいいような気がしました。

レビュー

消費社会の象徴でもあるショッピングモールで繰り広げられる文字通りのサバイバル。生きる実感を時々希薄に感じる人々をゾンビになぞらえ、やみくもに突進するなど消費に駆り立てられる姿をだぶらせている、とも言われるこの映画ですが、監督のザック・スナイダーが「ゾンビが出てくるかっこいい映画」と言っているように単純に怖がったり、ハラハラドキドキで楽しめばいいのではないかと思います。それほどメジャーな俳優は出ていませんが、脇を固める俳優たちもいい演技していて見所の一つです。でも、続編作るのは難しそう(考えていないとは思いますが・・・笑)。

タイトル / イノセンス 

公開年 製作国 / 2004年 日本映画

監督 / 押井守

出演 / 大塚明夫、山寺宏一、田中敦子 ほか

観賞場所 / 不明

ストーリー

西暦2032年、人とサイボーグ、ロボットが共存する未来。人間のための愛玩用アンドロイドが原因不明の暴走。所有者を殺害後に自爆した。同様の事件が多発する状況下で、公安九課のメンバーに捜査指令が下る。そして調査に向かうバトーとトグサに様々な出来事が降りかかる。

GOOD

皆さんも見てもらえると分かると思いますが、背景となる描写(ときに人物も)がとても細かく描かれているところ。風景だけでなく、小物や車、動物といったものまで、きめ細かくなっています。実写とは違いますが、アニメならではのリアル感を強く感じます。今回、映画では「Domino」というデジタル合成システムを全編に使用しているそうです。エフェクトを使った処理によるものか、モノの質感や動きといった色々なところで役立っているようです(推測ですが・・・)。

BAD

この映画は一見単独の映画のようですが、前作「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」とは流れがつながっていて、実質的には「攻殻機動隊2」といってもいいでしょう。前作からの流れが主人公のバトーの心理状態(またその心理の変化)に大きく関わっていてます。その原因である素子(知らない人には「”素子”って誰だ」ということになりますね・・・笑)が登場することによって(もちろん姿は見えない)、益々バトーと素子の関係が重要になってくるのですが、今まで「攻殻機動隊」を知らない人が、この映画を見たときにさっぱり理解できないとお思います。押井監督の描くテーマ「人間の意味」の問いかけはともかく、万人にはおススメ出来ません。もし、ご覧になりたい方は少なくとも前作が必見です。

この映画は先に挙げたとおり、細かい描写によりリアルさを出していますが、あまりにもスクリーン上の情報が多いため、見終わった後の「中途半端」感が拭えません。実写の映像ならともかく、アニメの場合はどうしても描いているものを目で捉えようとしてしまいます。そのため、あまり細かいと画面の切り替えに追いつかず、なんだか見逃してばかりいるように感じるのです。これがストーリーや内容のが比較的単純な映画ならまだしも、考えることが必要(または要求)な映画内容ですから、画面にそれが現されるのではと観客は考え、目で追ってしまうことにはならないでしょうか。 だからといって前情報がない観客のほうが惑わされないでいい、ということにはなりません。世界観やストーリー上の了解部分がないため、もっと分かりにくい映画と感じるでしょう。細かい描写が悪いとはいいませんが、漫画と違って簡単に読み返たり、戻ったりして確認できない映画ではあまりいいこととは思えません。

レビュー

映像面の描写については色々あるにせよ、まだ評価できますが、内容の難しさと読み取らなければいけない困難さを考えると、観客をかなり限定する映画だと思います。それは、映画の途中で何人も帰っていく人の姿からもうかがえます。私自身もはっきり言ってよく理解していませんし「映像は凄かったな〜」という単純な感想しか持てませんでした。

タイトル / ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還 

公開年 製作国 / 2003年 アメリカ映画

監督 / ピーター・ジャクソン

出演 / イライジャ・ウッド、イアン・マッケラン、ヴィゴ・モーテンセン ほか

観賞場所 / 丸の内ルーブル(有楽町)

ストーリー

フロドたちの指輪を捨てる旅も終わりに近づく。明かされるゴラムの過去。そして強大なサウロン勢によるゴンドール侵攻。次々襲いかかる試練に果たして中つ国の未来はあるのか。シリーズ三部作完結編。

GOOD

ご存知の方も多いと思いますが、映画はJ・R・R・トールキンが書いた原作「指輪物語」が原作となっています。この原作自体がものすごーく長くて、設定が緻密(例えば、それぞれの種族についての説明や歴史が、小説の最初から延々続く)で壮大なため、映画化は不可能といわれていました。しかし、監督のピーター・ジャクソンをはじめ、スタッフや出演者たちが原作に対する理解と意欲の結果(だと思いますが)、原作の雰囲気を表現出来ていました。私が「指輪物語」を最初に読んだのは中学か高校生のときだと思います。今まで原作がある映画作品は大体気に入らないものでしたが、このLOTRは原作を読んだときの感動が、追体験可能な出来映えでした。具体的にどこがどうと言うのは難しいのですが、どの出演者に対しても違和感がありませんでした。これは私にとっては本当に珍しいことです。また、ホビット庄などの環境の作りこみも素晴らしいと思いました。

ロード・オブ・ザ・リングにはCGが多く使われています(大規模な戦闘シーンやモンスターなど)。しかし、主要キャラクターである”ゴラム”がそうであるように、CGをCGと感じさせないリアルさが出ているからです。ゴラムの場合、声優(というか俳優)がいるのは当然としても、その動きなどは俳優自身をモーションキャプチャーを元にしてCGと組み合わせるといった具合です。それによって、そこには存在しないはずの生き物があたかもそこにいるかのような感覚を覚えます。「王の帰還」で初登場の”シェロブ婆こと巨大蜘蛛”も生物の狡猾さと動きが見事に表現されていて、「フロド、危なーい!」と思わず心の中で叫んでしまいました。また大規模戦闘シーン、特にミナス・ティリス攻防の場面では到底揃えられないだろう数万(?)の戦いが、それぞれ個別の動きをしながら臨場感溢れる、そして苦しくなるぐらい迫力を持って迫ります。この映画でのCGは、今まで映画に使われたCGのもう一つ上をいく一体感でしょう。CGが多く使われるとはいっても、それによって出演者の存在が薄められたり(また、ないがしろにされたり)せず、効果的かつ絶妙な使われ方をしているのも、またこの映画の特徴だと思います。

BAD

一見良かった点に反するようですが、具体的には主要キャラクターである”ゴラム”の名前。動きや存在感や感情表現(喜怒哀楽すべて)が素晴らしかったのですが、原作上では名前が”ゴクリ”。「ゴクリ、ゴクリ」とのどを鳴らすから、そう呼ばれるようになったはずですが、名前が変わってしまったのです。なにか雑誌(映画のプログラム?)で理由が書いてあったと思いますが、すっかり忘れました。その重要さを考えると残念なことです。もうひとキャラは”バルログ”。第一作に登場したのですが、はっきり言ってでか過ぎです(もはや鬼とは呼べない)。原作の「指輪物語」や他のファンタジー関連では違う表現だった気も・・・しかも翼があるので、飛べるんじゃないかと(映画では足場がなくなり、墜落して死ぬ?)。
余談ですが、名前といえば原作で好きだった名前は”ゴールドベリ”。エルフの女性キャラクターだった(原作は実家にあり、いま手元になのでうろ覚え)と思います。その名前が気に入り、高校生のときにパソコンゲームやTRPG(テーブルトークRPG)のキャラクターの名前に使用していました。

ストーリーですが、これはもう、しょうがないといった感じのことです。原作の内容が密度が濃いため、映画上での完全な再現は無理でしょう。本当にやるなら三部作ではすまなくなります。また、なにも「映画で同じにしなければいけない」ことはありません。取捨選択することも大事ですし、それによって映画にする価値があります。ただ、原作ファンとすればもう少し、といった気持ちが出てしまうのは避けられない(全員とは言わないですが・・・)ところです。

レビュー

とまあ色々書きましたが、結論をいうと三部作すべて満足のいく出来だったと思います。原作を読んでいない方は特におススメです!ファンタジーの娯楽映画といってしまえばそれまでですが、「愛・勇気・友情」といった普遍的なテーマが中心になっています。そして、旅立ち(ホビットたちのきっかけは強制的でしたが)により、苦難を乗り越え成長していく、そんな過程をファンタジーの舞台設定を通して表現しています。単なる戦争やアクションだけの映画ではありません。まだご覧でない方には、ぜひ第一作から見始めて欲しいと思います。長編のため、ストーリー上は完全に連続性がありますので、その点はご注意下さい(「マトリックス」シリーズと同じで、飛ばして鑑賞すると訳が分からない、当然映画にのめり込めない)。映画を見て気に入ったら、是非原作を読んでみることをおススメします。文体の堅苦しさはありますが(最近読んでいないので、昔読んだのとまた違うのかもしれませんが)、トールキンの物語の面白さを実感して欲しいです。